OITA NAKAMURA HOSPITAL

Feature[ 特集 ]

河野脳神経外科×大分中村病院 2院のトップが語る 連携した医療で実現する地域密着のウェルビーイング

speaker 話し手

河野義久

河野脳神経外科院長

河野義久(かわの よしひさ)

大分医科大学医学部医学科卒業。大分医科大学付属病院脳神経外科勤務、三愛病院・脳神経外科部長等を経て、1995年に河野脳神経外科(診療所)開業。2002年に河野脳神経外科病院開院。2021年一次脳卒中センターとして新病院を建設し、「寝たきりゼロ」を目指した病院運営と予防活動に尽力。坂本龍馬を敬愛し、「豊後龍馬会」にも所属。子供たちに医療の魅力を伝える「龍馬塾」を通じて、地域の未来を育む活動にも力を注ぐ。

中村太郎

大分中村病院理事長

中村太郎(なかむら たろう)

川崎医科大学医学部卒業。大分医科大学整形外科入局。大分医科大学大学院医学研究科博士課程卒業(医学博士)。九州労災病院、大分医科大学整形外科講師、英国ロンドン大学王立整形外科病院を経て、2000年に大分中村病院院長就任。2007年より現職(大分中村病院理事長)。救急医療とリハビリテーションを柱とした地域医療に尽力する。2024年1月新病院への移転を行い、より良い療養環境と地域完結型の医療体制づくりを目指す。

河野脳神経外科、大分中村病院の始まりや現在注力されている取り組みをお聞かせください。

河野:当院は開院して30年になります。始めはスタッフ11名の有床診療所でしたが、現在はおよそ100名体制となり、地域の脳神経外科の救急病院として診療を続けています。3年前に新病院へと新築移転し、特に注力したのが血管内治療に特化した体制づくり。24時間365日、即座に血管内治療が行える病院ということで、動線設計にこだわりました。

救急搬送からCT・MRIなどの画像診断、血管撮影室へと、全ての流れが最短で完結できるようにしています。“時間”と“場”の短縮がコンセプトで、血管内治療については、県内でもトップクラスになっているのではないかと思います。

中村:私たちも新しい病院へ移転して1年半ほどになります。以前の病院は昭和41年に建てられたもので、療養環境も良いとは言えなくなってきた中、「移転」できました。基本となる診療体制は、従来からの延長で「救急医療」と「リハビリテーション」の2本柱です。加えて、地域の医療機関や福祉・介護施設との地域連携を深めていくことを目指しています。

河野:今日、初めて新病院を拝見させていただいたのですが、玄関を入った瞬間に「すごいな」と感じました。先生のこの病院にかける想いやこだわりなど、ぜひ伺いたいです。

中村:いえいえ、そんなに大したものではないですが(笑)、これまで通り、誠実に地域の皆さんと向き合い、医療機関同士の信頼を大切にしながらやっていきたいという思いだけです。先生はいかがですか?

河野:新築時、ちょうどラグビーワールドカップ年だったんです。日本代表の“One Team”という考え方に共感し、当院も「ワンフロア・ワンチーム」を掲げ、平屋の病院を目指しました。救急・画像診断部・検査部・外来診療部・病棟まで、すべてをワンフロアに集約し、病室からは芝生や樹木のある中庭が見える療養環境を作りました。

―河野脳神経外科と大分中村病院の医療連携について教えてください。

河野:現在、回復期の患者さんのリハビリテーションをお願いする連携を行っています。大分中村病院からは、脳卒中の急性期の患者さんをご紹介いただき、当院で治療をさせていただいています。

中村:そうですね。当院は、現在脳神経外科の手術はほとんど行っていません。患者さんが来られた場合には、河野先生をご紹介して、急性期の治療をお願いしています。その後、当院のリハビリ病棟で受け入れさせていただき、社会復帰を目指すという形です。

河野:連携が本格的に始まったのは、1年ほど前ですね。現在リハビリテーションに関する勉強会も開催しており、先日9回目を迎えました。この勉強会は、2週間に1回のペースで行っていて、当院から紹介した回復期の患者さんについて、画像情報や急性期でのリハビリ状況、転院後の経過などを共有しています。

中村:新病院への移転にあたり、当院では急性期の病床を減らし、回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟のボリュームを増やしました。これまでの「自院完結型」ではなく、「地域完結型の医療」を目指しました。急性期の治療後のリハビリや在宅復帰に、他院と連携していこうというのが1つのコンセプトでした。その中で、河野脳神経外科の連携がより深まってきたのだと思います。

河野:近年は高齢の方の脳卒中が増えており、多くの患者さんが糖尿病など基礎疾患をお持ちです。中には、治療途中で誤嚥性肺炎を起こされる方もいます。リハビリが必要な方で、当院のような単科病院では全身管理までを担うことが難しい場面もあります。貴院は総合病院で、多様なケースでも快く受け入れてくださり、しっかりとした回復期のリハビリ対応をしていただけるので、非常に心強い存在です。

中村:そう言っていただけて、ありがとうございます。

―連携が深まる前後で実感することや、今後の取り組みを教えてください。

河野:現在、webカンファレンス形式で症例報告を行っています。急性期の段階で画像診断を行い、病巣を把握した上で「どのようなリハビリを行い、どのような経過を辿ったか」といった情報を共有しています。その後の回復期の経過も非常に適切なリハビリプログラムが実施されていると思います。皆さんとても真面目で、誠実に取り組んでいるのが伝わってきますし、本当に安心してお願いできると実感しています。

今後の連携の形としては、より情報をスムーズに共有できる電子カルテの連携も考えています。「ID-Link(アイディーリンク)」という仕組みで患者さんのIDをもとに電子カルテの情報が閲覧できるようになっていますが、この仕組みを活用し、患者さんの状態をもとにリアルタイムでディスカッションができる体制を整えていきたいと考えています。

中村:先生が提案されているような電子カルテを活用した連携が実現すれば、現場での負担軽減や情報の質向上につながりますね。当院の七森院長も「顔の見える連携をしないといけない」とよく言っています。最近は医療連携室を通じたやり取りが主流になっていて、直接医師同士で電話する機会も減ってきました。昔のように「ちょっとこの患者さん、お願いできないか」と直接やりとりする場面が少なくなってきた中で、河野先生とは顔の見える関係で、急性期と回復期として、しっかり連携していきたいと思っています。

―現状、大分市の地域連携の課題はありますか?

河野:脳卒中の急性期病院としての立場から申し上げますと、現状では急性期対応の体制、特に休日・祝日の各病院の “当番制”が明確に決まっていないのが実情です。血栓回収治療が可能な病院同士で、輪番制がしっかり構築されているのが理想ですが、まだ十分に整っていないのが課題のひとつです。

もうひとつは、回復期の連携です。当院のように40床の小さな病院で、救急医療を担うのは非常に負担が大きいですね。現在は、看護必要度や医療の重症度、DPCレセプト(※)件数など、様々な制度的な要件があります。そんな中回復期の病院に転院をお願いしても、すぐ受け入れてもらえないこともあります。そのため急性期側の病床が空かず、運用が厳しくなってしまうんです。

一方で、脳卒中には季節変動もあります。患者さんが急増したり、ある時期にはがらりと減る。すると今度は病床稼働率が下がってしまうという別の問題が生まれます。理想は、患者さんが多いときにはスムーズに転院させていただき、少ないときは当院で診させていただく。そういった柔軟な連携がうまい具合にできるといいなと感じています。

中村:当院でも今、地域連携部の担当者を中心に、月曜朝から医局にて医師全員と主要スタッフが集まり、病床の受け入れ状況を共有しています。疾患と状態に対応する病棟へできるだけ早く受け入れができるよう調整を行っています。当院には、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟の3つがあり、それぞれに看護必要度や平均在院日数といった指標があります。そのため、ベッドコントロールは非常に重要で、専任の担当者が日々看護必要度を測定しながら、マネジメントに当たっています。おっしゃる通り患者さんの動きには波があり、多い時期と少ない時期が極端なので、難しいところです。

河野:本当に病床コントロールは大変ですよね。最近は、お願いする患者さんの数は少しずつ増えていると実感します。大分中村病院は総合病院として、非常に柔軟に対応してくださるので、本当に助かっています。今後さらに連携が深まっていくと思いますし、実際に転院までの期間も以前より短くなってきていると感じています。

―お二方の「地域医療×ウェルビーイングへの想い」をお聞かせください。

河野:当院の基本理念の中に「地域のwell-beingに貢献する」という言葉があります。ウェルビーイングという言葉は定義が難しい面もありますが、私自身開業した目的は、「脳卒中で寝たきりになる方をゼロにしたい」という想いからでした。脳卒中になっても、回復して社会復帰される方は近年増えていますが、一方で、麻痺が残って生活が不自由になる方も少なくありません。だからこそ、「予防」に取り組むことが地域の健康にとって必要だと考えています。

当院は脳卒中センターであると同時に、認知症疾患医療センターでもあります。寝たきりの原因の多くを占めるのが、脳卒中と認知症。だからこそ、この2つの疾患を“予防の対象”とし、共通するリスク要因や生活習慣に対してしっかりアプローチしていく。脳卒中や認知症によって寝たきりになる人を地域からゼロにするーこの取り組みが地域におけるウェルビーイングではないかと思っています。

中村:私たちの病院では「救急」と「リハビリテーション」に注力してきました。回復期リハビリ病棟は、患者さんが再び住み慣れた地域で暮らしていけるように支えるための場所です。当院には療養型の病床はありません。「社会復帰・在宅復帰を目指す」ことを前提に、リハビリに取り組んでもらっています。それが患者さん一人一人のウェルビーイングにつながるひとつの形として、今後も取り組んでいけたらと思っています。

―最後に今回の対談のご感想やこれからの構想があれば教えてください。

河野:今日は初めて新しい大分中村病院を見学させていただきましたが、景色もよく素晴らしい環境で、急性期の治療やリハビリに取り組んでいる患者さんは、きっと幸せだろうなと感じました。

中村:今日はお話を伺いながら、河野先生が自ら病院を立ち上げ、様々な想いを形にされてきたことに、改めて感銘を受けました。私とはまったく違う立場で医療をつくってこられた方だと、尊敬の念を抱いています。

河野パラリンピック支援や大分国際車いすマラソンなど、大分中村病院全体で積極的に取り組んでおられることは、世界的にも評価されていると思います。これは、まさに「大分の宝」だと思っています。この素晴らしい活動を、これからもどんどん広げていってほしい。私自身何かお手伝いできればと思っていますので今後もよろしくお願いします。


※DPCレセプト:入院医療費の計算方法の一つ「DPC(診断群分類包括評価)制度」に基づいた、急性期病院の入院医療費に関するレセプト(診療報酬明細書)のこと。DPC制度を導入している病院が発行する。

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