OITA NAKAMURA HOSPITAL

Feature[ 特集 ]

地域を、ともに支える医療へ ―両院が描くこれからの連携―

speaker 話し手

高齢化が進み、救急・急性期治療だけではなく、包括期・生活期・在宅までを一体的に支える仕組みづくりが求められる中で、救急・リハビリを担う大分中村病院と、地域包括ケアの中核としての機能を持つ大東よつば病院が緊密な連携を深めています。さらに、2026年には大東よつば病院が新築移転を予定。「地域に開かれた病院」を掲げ、ICTを活用したスマートホスピタルとして生まれ変わろうとしています。
今回、学生時代からつながりを持ち、地域医療を長く支えてきた両院の院長・医師が集まり、これからの連携や地域医療の姿”について語り合いました。

七森和久

大分中村病院 院長

七森和久(ななもり かずひさ)

大分医科大学(現大分大学)卒業。大分中村病院に入職後、30年以上にわたり整形外科医として地域医療の現場を支え続ける。整形外科部長、副院長を経て、2019年より病院長就任。 同院の柱である整形外科に加え、当初数名のスタッフから出発したリハビリテーション部の組織拡大と育成に尽力。病院全体の診療体制を整えるとともに、長年、理学療法士・作業療法士専門学校の講師として教鞭を執り、地域のセラピスト育成にも精力的に取り組んでいる。

立川洋一

社会医療法人関愛会 大東よつば病院 院長

立川洋一(たつかわ よういち)

1986年大分医科大学(現大分大学)卒業。医学博士。日本循環器学会専門医として米国での研修等を経て、心血管治療の高度化に貢献。大分岡病院院長などを歴任し、地域の急性期医療を牽引してきた。 臨床の傍ら多摩大学大学院にて経営情報学修士(MBA)を取得。医療経営士1級の資格も持ち、現在は「医療×経営」の視点から地域完結型の医療体制構築を推進している。多趣味な一面もあり、ワインエキスパートやドラム演奏、楽曲制作など、その活動は医療の枠を超えて多岐にわたる。

高倉健

社会医療法人関愛会 大東よつば病院 医師/介護老人保健施設やすらぎ苑 施設長 (※移転後は「よつばの丘」施設長)

高倉健(たかくら たけし)

1984年大分医科大学(現大分大学)を1期生として卒業。医学博士。循環器疾患を中心に内科救急の最前線に長年携わり、救急隊へのメディカルコントロール体制の構築にも尽力。アルメイダ病院副院長時代には総合診療科を開設し、新型コロナウイルス感染症患者の診療にあたるなど、地域の医療体制の維持に貢献した。これらの功績により、2022年に厚生労働大臣表彰、2023年には総務大臣表彰を受賞。現在は関愛会にて診療顧問を務める傍ら、母校の同窓会「玉樹会」の第7代会長を務めている 。

―みなさまは大分大学医学部(旧・大分医科大学)ご出身という共通点があります。当時からこれまでのご関係を教えてください。

七森:高倉先生が一期生、私(七森)が二期生、立川先生が三期生です。昔は学生数が少なかったから、だいたい全員顔見知りでしたね。

高倉:クラブも掛け持ちしてましたよね。スポーツ系にも文化系にも所属して、自然と顔見知りになる環境でした。

立川:大分医科大の創設当初はグラウンドが整っておらず、1・2年の学生が石拾いから始めてスポーツをしたりして大変でした。特に1〜4期生は、自分たちが大学の基盤を作ったという強い思いを持っていると思いますね。

高倉:大変な時代を共有しているわけなんです(笑)。

七森:その後は、私が旧緒方町立病院に勤務していた頃、高倉先生が常勤として来られて数年同じ病院で働きました。高倉先生は地域医療や救急の面で、大分を引っ張られてこられた先生なので、改めて最近付き合ってみると、すごい先生だなと実感しています。立川先生は僕より先に院長をされていたので、心強かったですね。

立川:以前所属していた病院の院長をしていた時に、七森先生が大分中村病院の院長になられて、いろんなお話をする機会がありましたね。今のように懇意にしていただけるようになったのは、七森院長が就任されてからですね。以前から「大分中村病院の整形外科を牽引されている七森先生」ということで存じ上げていましたが、より深いお付き合いになったのはここ数年のことです。

七森:つながりはずっと続いていて、どこかで会うと声をかけて、一緒に食事をしたりしていますね。

高倉:僕はずっと大分市以外の豊後大野市や佐伯市で診療をしていて、約10年前に大分市へ戻り、初めて市内の病院に勤務することになったんです。地元に戻ったことで同級生やその高齢の家族から相談を受けられるようになり、役に立てることを実感していますね。また、大分中村病院にも知り合いが多く、支えてもらえる環境をありがたく感じています。

七森:地方で働いていた同窓の医師たちが大分市に戻り始めた時期で、相談や連携がしやすくなりましたね。特に一期生の高倉先生がチームリーダーのように動いてくれて、同窓ネットワーク作りが進んでいると思います。顔を知っているので、連携をとる時に心強いんですよ。

―大東よつば病院様は2026年4月に新築移転を予定されております。新病院への想いや取り組みをお聞かせください。

立川:新病院のコンセプトとして、3つの柱を掲げています。1つ目は 「地域に開かれた病院」 です。大東地区には、私たちの60床ほどの病院しかありません。私たちの理念の一つに「地域包括ケアの推進」があります。地域包括ケアでは、高齢者だけでなく「生まれてから最期まで」を担うということです。病気になってから来る場所ではなく、未病(病気になる前の状態)の段階から地域の方々と関わり、健康管理も含めて活用していただける“地域の中核”になりたいと考えています。

新病院のパース図(北東)
新病院のパース図(南東)

※ 2026年4月、大分市横尾に誕生する新病院のパース図。 新築移転に伴い、病床数は45床から60床へと拡大されます。敷地内には訪問看護や通所・訪問リハビリの各事業所も併設され、地域包括ケアの中核を担います。また、併設の介護老人保健施設「やすらぎ苑」は「よつばの丘」へと名称を改め、50床から72床体制でより手厚い支援体制を整えます。

2つ目は「癒しの場(ウェルビーイング)」 の提供です。それは職員、地域の皆さん、患者さんとご家族、そして「老健よつばの丘(※移転後「老健やすらぎ苑」から名称変更)」の利用者とそのご家族、みなさんに癒しを感じられる空間であることを目指しています。

3つ目は 「ICTを活用したスマートホスピタル」 です。ICTを活用して業務効率化を図り、スマートな病院、老健施設、介護施設を目指しています。例えば、導入を予定しているスマートベッドシステムでは、横になって眠っているのか、起きているのかといった睡眠状態や覚醒、離床の動きまでセンサーで把握できます。夜間は画面を見るだけで動きを確認できるため、看護業務の負担軽減にもつながります。血圧などのバイタルも自動でカルテに取り込める仕組みも導入予定で、ハードもソフトも変えていきたいと思っています。

これは業務効率化を図ることで、患者さんや利用者さんのそばでケアする時間をなるべく多くすることが目的です。より患者さんに寄り添える病院にしたいと思っています。

―地域包括ケアを中心とした大東よつば病院と、急性期・リハを担う大分中村病院の連携についてお聞かせください。

七森:昔の大きな病院は「自己完結型」でした。救急が来ても外に振らず、大学に紹介することすら少なかった。しかし、時代とともに強い部分・弱い部分が見えてきて、横のつながりが必要になってきたんです。その中で先輩・後輩のつながりで「補完し合える連携」が生まれました。当院が他院との連携を本格化したのは新病院に移ってからですね。

立川:大東よつば病院は、急性期ではなく、どちらかというと包括期から維持期に近い病院です。大分中村病院さんで骨折手術をして歩けるようになったけれど自宅に戻るのはまだ難しい、そんな患者さんを「もう少し大東よつば病院で預かってもらえませんか」とお願いされれば、「はい、わかりました」とお受けするような、そういう役割を担っています。
まさに領域が違うからこそ、今日のように“連携をどう考えるか”が重要だと思うんです。

私たちは地域包括ケアを中心とした病院なので、急性期のあとのリハビリテーションや、退院後の生活環境の調整、さらには介護保険サービスの組み立ても担当します。これからは在宅医療が増えるので、こうした役割はますます重要になります。

一方で、在宅や外来の患者さんの中には、急性の腎盂腎炎や尿路感染症、腰椎の圧迫骨折など、「手術までは必要ないが入院が必要」といったケースもあります。まず私たちの病院で入院して痛みを取り、歩けるようになったら自宅や施設に戻っていただく。

こうした急性期の“後”のケアをポストアキュート、在宅の患者さんが急に入院が必要になった時に短期入院で支える役割をサブアキュートと呼びます。私たちはその両方の機能を担う病院です。

もちろん、私たちの医療技術で対応できればよいのですが、より精密な検査・高度な治療が必要な場合は大分中村病院さんをはじめとする急性期病院へお願いしています。大分中村病院さんは手術だけでなく、内視鏡検査・治療、循環器の心不全管理まで快く対応してくださるので、本当に心強い存在です。

七森:相互に補い合う連携を取りたいですね。大分中村病院は完全な急性期病院でしたが、時代とともに求められる役割も変わってきました。高度救急のさらに先を担う急性期を経て、次のフェーズが私たちという位置づけになります。

急性期・ポストアキュート・生活期とフェーズは違っても、患者さんにとっては連続した1つの流れだから、目線を合わせていくことが本当に必要だなと思います。略語の違いやリハの専門用語など、意外と“伝わっていない”ことがあるので、勉強会などで足並みをそろえていく必要がありますね。目線を合わせていくっていうのは、今の話を聞いて大切なとこだなと思いましたね。

立川:病気を治療する過程は、手術が必要な段階から、リハビリが必要な段階、そして退院後の療養環境を整える段階と続いていきますよね。大分中村病院さんは、その最初の急性期の部分をしっかり担ってくださっている。

私たちは、その後のリハビリや、退院後の療養環境の調整、介護サービスの組み立てを担っています。そして患者さんは、その流れに乗って回復していく。場合によっては、「もう少しリハビリを続けましょう」ということで、高倉先生の老健に移ることもある。患者さんの流れでいうと、今日座っている順番そのままですよね(笑)。

もちろん、すべてが順番通りというわけではなく、患者さん一人ひとりの病状の流れによって、連携の形は常に変わっていくので、個々の連携も大事です。

七森:それはやっぱり一連の1つの課題ですよね。どれだけスムーズに目線を合わせていけるかっていうのもあるし。患者さんそれぞれ事情があるからこそ、意見交換できるようなシステムが必要ですね。必要最低限の情報を早い段階で共有して、状況をフィードバックしながら連携できる体制があったほうがいい。「こんな患者さんがいて、こういう状態だから少し預かってもらえませんか?」と気軽に言い合えるような情報共有の仕組みですね。

立川:MRIのない当院では圧迫骨折の新旧判定が難しいことがあります。場合によってはもっと高度な治療の適用になることもあるかもしれません。また持病や合併症、認知機能など総合的に判断して、大分中村病院さんにお願いすることもあります。すぐ当院に戻ってくるケースもありますが、それはそれで「専門的に急性期の大きな病院で見ていただいたから良かったですね」ということで患者さんも納得はされます。そういった連携もとても大事だと思っています。

七森:できること、できないことをはっきり見極めて、お互いに補完し合おうっていうのが、これからの医療は大切になってくるんじゃないかなと思うんですよね。

高倉:最近は高齢者の1人暮らし、高齢夫婦だけの2人暮らしといった家庭が非常に多くなったんですよね。「手術は終わっても、すぐに自宅で今まで通りの生活には戻れない」といったケースがほとんどです。ご両親が大分市外の遠方で暮らしている場合も多く、大分市内の施設で受け入れてほしいというご家族の希望も増えています。本人が知らないところは不安なので、「ここに来てよかった」と思われるような施設、高齢者が過ごしやすい環境を作ってあげることは、とても大切だと思っています。ご家族や配偶者の思いも配慮して、 急性期→包括期→生活期の流れをいかに安心して作ってあげられるか、が必要ですね。

七森:今は大分中村病院も“高齢者医療”が中心です。先生方がおっしゃったようなことをトータルで見ていくために、ちょうどいいパートナーシップを結べるところが見つかったなという気がしてるんですよね。

立川:今は地域包括ケアをしていますが、私も高倉先生も急性期の知識や経験が豊富なので、今の仕事もスムーズにできているんじゃないかなと思ってます。また、大分中村病院の先生方は、ほとんど存じ上げているので、お願いしやすいですね。

七森:顔が見えている関係だからこそ、ちょっとした無理も言いやすいんですよね。今のように患者さんの流れがはっきりできれば、今後の医療はもっとスムーズにいくと思います。

―連携のために、これからの取り組みや地域医療について、お聞かせください。

立川:医師同士だけでなく、看護師・リハ職・ケアマネ・介護職など、多職種に「大東よつば病院・老健よつばの丘と大分中村病院は良い連携ができている」と認識してもらうことが大事だと思います。連携を深めて、またさらに地域に広げて、介護職の人たちまでそういう連携がちゃんとできてるんだよっていうのを知ってもらうと、もっと強固な連携になると思いますね。

七森:当院でも地域連携懇談会や介護連携会を行っていますので、ぜひ参加してもらえるといいですね。

立川:大東よつば病院はまだ開院5年ほどで認知度が低く、電話でも「どこですか?」と聞かれることがあるくらいです。今回の記事や新病院移転を機に、地域や多職種とのつながりや認知をもっと広げていきたいですね。

七森:行き先の病院のことを知っておく必要がありますよね。新病院ができたら、ぜひスタッフも連れて遊びに行きたいですね。

高倉:顔の見える関係ってとっても大事だと思うんですよね。僕たちドクターだけでなく、他の医療スタッフもお互い顔が見える関係を作っていけるといいですね。

立川:これからの地域医療については、高齢者の独居・老老介護は今後確実に増えます。その中で医療・介護・地域の連携がしっかり構築されていることが重要だと思います。

七森:お二人のように急性期を深く理解している医師が地域包括ケアに関わると、患者さんの生活期まで自然と目が向く。実際、独居のお年寄りの生活背景まで見据えた医療ができるのは、お二人にとっても新鮮な経験なのではないかと思います。

高倉:今、私たちが所属している大東よつば病院は、社会医療法人・関愛会の一つの病院です。関愛会では地域包括ケアの推進を理念に掲げていますが、さらに進んで“地域共生社会”の旗振り役となり、地域全体をまとめていくような活動にも取り組んでいます。

たとえば佐賀関の地域では、高齢化や過疎化が進む中で、子どもたちが集まって食事をする場を提供したり、高校生と一緒にイベントを企画したりと、世代を超えた交流の場づくりを行っています。医療として高齢者へのアプローチはもちろん重要ですが、「病院が地域文化をつくる存在になる」という視点で取り組むことで、病院としての魅力も高まると感じています。

立川:先ほどお話しした「地域に開かれた病院」という考え方は、地域の方を受け入れるだけでなく、私たち自身が積極的に地域へ出ていき、住民の皆さんと一緒に地域を活性化していくという意味も含んでいます。大東よつば病院も新病院移転を機に、そうした活動にも力を入れていきたいと考えています。

七森:当院はこれまでの「超急性期で若い患者さんを多く診ていた病院」というスタイルから、徐々に変わっていかないといけないと思っています。大分市自体が高齢化していますから、高齢者医療にシフトしつつ急性期を維持するという難しい舵取りが求められます。だからこそ、大東よつば病院との連携やサポートが、これからますます重要になってくると感じています。

当院も地域のハブ病院を目指していますが、単独では成り立ちません。こうしてタッグを組める病院として、より一層お互い力になれればいいなと思います。

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