OITA NAKAMURA HOSPITAL

Feature[ 特集 ]

あなたの健幸を守り隊が語る おうち体操を続けるコツ

INFORMATION 今回の話し手

大分中村病院の言語聴覚士、理学療法士、作業療法士の3名が、患者さんの退院後のリハビリ継続を支援するために立ち上げた動画シリーズ「あなたの健幸をまもり隊」。この度、全12本の動画制作を終えたメンバーに集まっていただき、座談会を開催しました。
本記事では、動画制作の舞台裏で工夫した点や、リハビリ専門職として患者さんへ伝えたい「三日坊主でも続く」体操のコツについて、ざっくばらんに語っていただいた模様を深掘りします。座談会の様子は、動画でも公開していますのでぜひそちらもご覧ください。

渡邉みなえ

大分中村病院言語聴覚士

渡邉みなえ(わたなべ みなえ)

入職8年目。回復期病棟にて、脳卒中患者の嚥下障害や高次脳機能障害のリハビリを実施。

浜崎亜美

大分中村病院理学療法士

浜崎亜美(はまさき あみ)

入職3年目。回復期病棟にて、主に整形外科のリハビリを担当し退院までサポート。

髙橋杏実

大分中村病院作業療法士

髙橋杏実(たかはし あみ)

入職5年目。回復期病棟に所属。主に整形外科の患者を担当。

動画制作のきっかけと現場の課題

Q. この動画シリーズを始められたきっかけや、制作前の課題意識についてお聞かせください。

渡邉

きっかけは、入院されている患者さんが退院しても自宅でリハビリを続けられるようにという思いからでした。病院から家に帰られた後も、おうちでリハビリができるような動画が共通してあればいいな、ということをメンバーで話し合っていて、それが始まりです。実際に、私たち言語聴覚士が担当する口腔のリハビリや、手足の運動の動画を撮っていきました。

髙橋

私たちが患者さんに退院時にお渡しする資料は、書面で運動や注意事項をまとめたものになります。しかし、実際の動きというのは、書面ではなかなか伝わりづらいところがあると感じていました。動画として、私たちが動いている実際の動きが患者さんに伝われば、自宅でも正しく運動を実践できるのではないかと考え、このプロジェクトをスタートさせました。

制作の裏側!難しかった点、楽しかった点、そしてチーム名

Q. 制作の中で、特に難しかった点や、逆に楽しかったエピソードを教えてください。

浜崎

難しかったのは、患者さんが目の前にいらっしゃらない状態で指導するという点です。例えば、お尻上げの運動などでは、お尻の力ではなく腰を反って誤ったやり方をしてしまう方がいらっしゃいます。それを防ぐために、誤ったやり方をしないように見せることもそうですが、言葉で伝えるのも非常に気をつけました。目の前にいればすぐに修正できるのですが、それができないという点は、難しさを感じた部分ですね。

髙橋

動きがわかりづらい運動、例えば腹式呼吸などでは、タオルをお腹の上に乗せて、動きが目で見てわかるように工夫したりもしました。逆に楽しかったのは、やはりNGを出した時ですね。特に、結構長い文章などを暗記するのが大変で、よく笑い合いました。

浜崎

かかと上げの運動の動画撮影は楽しかったです。一人が正面を向いて、もう一人が横向きになって、前からと横から両方見られるようにというのをやった時、見られている感じと、その様子を見ている側とで、めちゃくちゃ笑いました。

Q. ちなみに、「あなたの健幸を守り隊」という戦隊もののようなチーム名はどなたの発案?

渡邉

名前を考えたのは私です。動画を通して、運動を続けて心身ともに「健幸」(健康と幸せ)になってほしい、それを支えていきたいという思いを込めました。

浜崎

ポーズは私がノリで、「戦隊ものって言ったらこれやろ!」みたいな感じでパッとやったのが始まりだったような気がします。

渡邉

(笑)そう、浜崎さんがやったから、私たちもやらないといけなくなっちゃいましたね。戦隊もののような名前にかけましたが、今ではこの名前もポーズも、私たちの活動にしっくりきています。

完成後の反響と、継続のコツ

あなたの健幸を守り隊の動画は、退院後の自宅での活用だけでなく、院内の病棟でも実際に流し、患者さんと一緒に体操を行う取り組みとして活用されています。病棟スタッフの声かけとあわせて動画を流すことで、患者さんが自然と体を動かすきっかけづくりにもなっています。

渡邉

私自身は頻繁には見ていないのですが、実際に動画を見ながら運動してくださる患者さんもいらっしゃいました。ただ、難しい動きだったり、伝わっていなかったりした部分もあったなというのは、後から感じたことです。あと、驚いたのが、大分中村病院を退職された方から「動画見たよ」と連絡が来て、「私これ使っていい?」と言われたことです。職員以外の方も見て活用してくださっていると知り、私たちも嬉しく思いました。

髙橋

私は何回か病棟で見たのですが、看護師さんが周りにいることで、認知症の患者さんも一緒に「やるよ」みたいな感じで運動してくれていました。また、通りすがりの患者さんとかも「何やっとんや」みたいな感じで、興味を持って見てくれる方もいましたね。

浜崎

病院では直接は見かけなかったのですが、長崎の実家にいる母親から「動画見たよ」と連絡が来ました。さらに、祖母と祖父にも見せて「一緒にやるね」と声をかけてくれたそうで、患者さんのご家族にも繋がりが持てたのは良かったと感じています。

Q. 体操は続けるのが難しいものですが、「三日坊主でも続くコツ」を一言で言うと?

髙橋

私自身もあまり継続が得意な方ではないので(笑)。コツは、「気が向いた時にやる」のも継続だと思うことです。全部のメニューを完璧にやらなくても、できるところだけちょっとやってみるとか、空いた時間にやる、あるいは見るだけでも、何もしないよりは違うのかなと思います。

浜崎

私も継続は苦手なので、継続のためには「目標」や「楽しみ」があったら頑張れると思います。例えば「旅行が楽しみ」とか「孫と遊ぶのが楽しみ」とかですね。そういう目標があれば、ある程度筋力や体力がないと大変だと感じるので、「じゃあちょっとやろう」となる。毎日じゃなくていいから、それこそ気が向いた時に一つでも運動できたら、それで十分だと考えています。動画がその「きっかけ」になれば嬉しいです。

渡邉

お二人が言われたように、目標がないと、頑張る意味が分からなくなってしまうので、まず何か目標を決めることですね。また、「毎日やらないと」と気が張ると続きにくいと思うので、空いた時間に「やろうかな」という気軽さを持つ方が、継続しやすいのかなと思いました。

動画制作を通しての成長と気づき

Q. この経験を通して、ご自身の業務やリハビリに対する考え方で、何か成長や気づきはありましたか?

浜崎

患者さんへの「掛け声」が変わったと思います。動画を撮る前は、ただ数を数えたり、「頑張って」と淡々とした掛け声しかできていなかったな、と思うんです。ですが、動画では「楽しく一緒にやりますよ」という意識を持ってやっていたので、実際に患者さんを目の前にした時も、数だけでなく、途中に入れる励ましの言葉などに、楽しさや思いを乗せるのが上手になったかなと感じています。

髙橋

患者さんに指導する時、カメラの前で「分かりづらい」「伝えづらい」と感じた経験を思い出しながら説明するようになりました。そのおかげで、以前よりも患者さんに要点を伝えやすくなったと思います。あと、単純に長い台本を覚える必要があったので、暗記する力がついたのも良かったです。

渡邉

リハビリの時間はどうしても限られてしまうので、その「空いた時間に何ができるか」を深く考えるようになりました。やりやすい体操は続けてほしいという思いから、この動画以外でも、患者さんが退屈している時間にできること、例えば脳トレなども積極的に取り入れるようになっています。リハビリ専門職として、病院全体で患者さんの生活を豊かにできる方法を、以前よりも深く考えるようになったかもしれないですね。

最後に:健幸をまもり隊が示すリハビリの未来

「あなたの健幸をまもり隊」の動画シリーズは、退院後のリハビリ継続という医療現場の長年の課題に対して、「動画」という現代的な手法で取り組んだ画期的な試みでした。

制作メンバーである3名の療法士が強調するように、リハビリを続ける秘訣は、完璧を目指さず、目標を持ち、気軽にできることから始めるという、患者さんの気持ちに寄り添った柔軟な姿勢にあります。


なお、本記事で紹介した「あなたの健幸を守り隊」の体操動画は、現在も公開中です。  気になる体操や、もう一度見てみたい動画があれば、ぜひ下記リンクからご覧ください。
・体操動画シリーズの一覧はこちら

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