―まずはそれぞれ医療の現場を目指したきっかけ、大分中村病院に入職した経緯をお聞かせください。
堀:小さい頃から、食べることや料理をすることが好きで、医療職だった母親から「管理栄養士」という仕事を勧められたのが、この道を目指したきっかけです。ただ大学に入るまでは、管理栄養士の仕事について、給食を作る仕事というイメージしかなく、具体的な仕事内容はわかっていませんでした。大学では、学校や保健所、病院など、さまざまな現場で実習を経験したんですが、その中で病院は大変さもありましたが、それ以上にやりがいを感じ、最初の就職先には病院を選びました。
新卒で入職した病院では給食現場を担当し、栄養士の仕事を幅広く経験しました。5年ほど在籍していたのですが、現場で様々な業務に携われたことは、とても大きな経験になったと思います。
大分中村病院は入職して2年目です。これまでは単科の病院が多く、ライフステージに合わせて働き方を変えてきましたが、2年ほど前から、「もっと栄養管理をメインに患者さんと関われる仕事がしたい」と考えるようになり、そうした働き方ができる環境を探していた中で、ご縁をいただきました。

澤田:私は姉が理学療法士の学校に通っていて、その影響で医療職に興味を持つようになりました。高校生の頃、夏休みに姉の大学へ遊びに行く機会があり、先生方とお話しをする中で、リハビリテーションの専門職に興味を持つようになったんです。
最初はリハビリというと理学療法士をイメージしていましたが、先生から「理学療法士は人数も増えているけれど、言語聴覚士(ST)はまだ少なく、これから必要とされる職種だよ」と聞き、初めて言語聴覚士という仕事を意識しました。
その後、養成校の見学に行き、食べることや話すことといった、人が生活する上で欠かせない部分を支える専門職だと知り、「言語聴覚士になりたい」と思ったんです。それから福祉の大学で4年間学び、国家試験を受けて資格を取得しました。
卒業後、最初に就職したのが大分中村病院です。就職活動ではたくさん調べながら様々な病院や施設に見学にも行きました。その中で最後に訪れたのが大分中村病院だったんですが、当時のリハビリテーション部長やSTの先生方とお話をした時に、すごく雰囲気が良かったんです。私にはその友好的な空気が合っていて、「ここで働きたい」と思いました。

―それぞれの現在の仕事内容について教えてください。
堀:栄養課では、主に患者さん一人ひとりの栄養管理や栄養指導を担っています。給食については、献立、食材の発注・管理、調理まで委託会社さんに全面的にお願いしていますが、病院側でも栄養管理などを行います。病棟からのオーダーを共有したり、患者さんの状態に合わせて細かな調整をしたり、委託会社さんとの連携も大切な業務の一つです。
加えて、NST(栄養サポートチーム)も実施しており、多職種カンファレンスへの参加や回診など、病棟業務も行います。対象の患者さんごとの食事面についてアドバイスを行い、多職種で意見を出し合ったり、それぞれの専門職の視点を聞くことで、患者さんの心情につながる気づきもあり、とてもためになっています。また、医師からの依頼で外来・入院での個別の栄養指導や相談も行っております。
澤田:私は現在、主に急性期病棟でリハビリを担当しています。ただ、言語聴覚士は人数が少なく、院内に5人しかいないため、急性期だけでなく、回復期病棟や地域包括ケア病棟など、ほぼ全病棟を見ながら対応しています。嚥下(※1)障がいのある患者さんへの訓練はもちろん、回復期では脳卒中後の患者さんに対する嚥下訓練や、高次脳機能障がい(※2)のリハビリなども行っています。
※1 嚥下(えんげ):食べ物や飲み物を飲みこむこと。
※2 高次脳機能障がい:病気(脳卒中など)や事故によるケガで脳の一部に損傷を受けたことで、それまで当たり前にできていた日常生活や社会生活に支障が出てしまう状態のこと。

―今、お二人は実際にどのような形で連携されているのでしょうか。
澤田:NST(栄養サポートチーム)での関わりもありますし、日常的にも、嚥下障がいのある患者さんの食事面については、栄養課の皆さんと密に連携しています。
堀:患者さんが「食べられない状態」から食事を始めるにあたって、どのような食事形態なら食べられるかを、言語聴覚士の方で判断してくださいます。それに応じて、私たちが食事内容や形態を調整したり、「これくらいの栄養量は必要ですね」と相談しながら進めています。
澤田:必要なカロリー量を教えてもらって、「そのカロリーを摂るには、どういう食事内容で、どう食べるか」など、患者さんごとに相談しながら決めていますね。
堀:特に急性期の患者さんは、こまめに連携することが多いですね。1食ごとに内容を調整することもあります。
澤田:そうですね。急性期では、最初は嚥下障がいが重く、まったく食事ができない状態の患者さんもいます。そこからリハビリを行い、少しずつ「食べる」段階へ移行していくのですが、その時に「どんな形態なら食べられるか」「どのくらいの量なら食べられるか」を細かく見ていきます。
ただ、食べられる量だけでは必要な栄養量に足りないこともあるので、「どう補っていくか」を栄養課に相談しながら、一緒に考えています。患者さんが食べやすいことと、必要な栄養をしっかり確保すること、その両方を大切にしています。
堀:患者さんの状態は日々変化しますからね。情報共有もスピードを意識していますね。
澤田:そうですね。できるだけタイムラグが出ないように、メールではなく、電話をしたり、直接相談しています。連絡すると、すぐ対応していただくことも多いです。
堀:私たちもお昼の時間に病棟へ行き、患者さんの食事の様子を見るようにしています。その時に言語聴覚士の方と会えば、患者さんの食事の量や、食べる様子など、一緒に評価して、相談していますね。
澤田:そこで情報共有をして、必要に応じてすぐ対応していくという流れですね。日常的にスムーズな連携ができていると思います。

―栄養とリハビリは、どのように関係しているのでしょうか?
澤田:必要な栄養量が摂れず、エネルギー不足の状態だと、リハビリでも十分に力を発揮することができません。入院生活では、「睡眠・食事・排泄」が基本的にとても大切なんですが、その中でも栄養はすごく重要だと思っています。どれだけ筋力トレーニングをしても、必要な栄養が足りていなければ筋肉も体力もつきません。しっかり栄養を摂って、きちんと休む。その土台があるからこそ、リハビリにもつながっていくので、栄養とリハビリは切り離せない関係だと思います。
堀:1日に3回ほど、リハビリをされる患者さんもいますよね。
澤田:そうですね。1日に3回、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)とそれぞれがリハビリを行う患者さんも多いです。そのため、必要な栄養が足りていないと、体力が持たず、すぐに疲れてしまったり、リハビリを長く続けられなかったりすることがあります。中には、そもそも起き上がること自体が難くなったり、「きつくて動きたくない」という状態の患者さんもいらっしゃるので、栄養の大切さを実感します。
堀:回数や時間、運動量などリハビリの強度によって、必要なカロリー計算も変わってきますよね。
澤田:最初は寝たきりだった患者さんも、動き始めるようになると、「もう少しカロリーを増やしたい」という段階になってきます。その変化に合わせて、管理栄養士さんたちが必要な栄養量を計算してくださっていますね。

―「食べること」が持つ力を感じる場面やエピソードを教えてください。
堀:NST(栄養サポートチーム)で関わる患者さんでは、そういった変化を感じる場面が多いですね。最初は「食べられない」とおっしゃっていた患者さんでも、少しずつ食べられるものを探しながら関わっていくことで、食事量が増えていくことがあります。NSTとしては、食事量が増えて、栄養状態が改善し、チームを卒業できることが一つの大きな目標になります。
澤田:食事内容を少し変えることで、状態が大きく変わる患者さんもいますね。たとえば、おかゆやご飯はあまり進まなかった方でも、パンや麺類を提供してみると、そこから食欲が出てきて、おかずも食べられるようになって体力もつき、だんだんリハビリも進められるようになる、というケースもあります。
また、認知症の患者さんでは、嚥下機能自体には問題がなくても、「食べられない」という方もいらっしゃいます。そんな方には食べさせ方を工夫したり。以前、スプーンで介助してもなかなか口を開けてくださらない患者さんがいたのですが、自分の手でつかんで食べる形に変えたら、食べられるようになったことがありました。
“何を食べるか”だけでなく、“どう食べるか”によって変わることもあります。そういった情報を、栄養士さんや看護師さん、リハビリスタッフで共有しながら対応しています。またご家族から、「もともとこういうものが好きだった」「普段はこうやって食べていた」と教えていただいたり、みんなで試行錯誤しながら関わっています。
堀:「口から食べられなくなる」ということは、本当に大きなことだと感じます。食べたい気持ちはあるのに、機能的に食べられない。大変だし、辛さもありますし、やっぱり“口から食べる”ということは、身体だけでなく、気持ちの面でもすごく大切なんだと思います。年齢を重ねても、口から食べることができるというのは、いろんな楽しみにもつながるのではないかなと感じます。

―お互い専門職として連携される中で、「ここがすごい」と感じるところはありますか。
堀:私は、大分中村病院に来て初めて、言語聴覚士の方とここまで密に仕事で関わるようになりました。実際に一緒に働いてみると、本当に心強い存在だなと感じています。食事を再開するタイミングや、どういう形態なら安全に食べられるかなど、専門的に見ていただけるので、とても頼りになります。
澤田:栄養士さんは、本当に丁寧に患者さんと向き合っている印象があります。入院前にどんな食事をしていたのか、どんなふうに準備して、どう食べていたのかまで、すごく丁寧に聞き取ってくださっていて。私たちも患者さんからお話を伺いますが、栄養士さんからの情報も共有しながら、「この方はこういう食生活だったんだな」と深く理解することができます。食事指導も、患者さん一人ひとりに合わせて提案されているので、リハビリ専門職としては、退院後の生活を考えた時にとてもありがたい存在だと思っています。

―そのほか多職種との連携について教えてください。
堀:日常的にさまざまな職種と連携していますが、特に看護師さんとはやり取りが多いですね。病棟へ食事の様子を見に行った時に、患者さんの様子を伺ったり、相談し合ったりしています。
食事内容の最終的な指示は医師が出しますが、評価や調整は、私たちも行っています。「患者さんが食べられていない」と相談があれば、何が原因なのかを聞き取りながら、食事内容を提案することもあります。実際には、食事形態が合っていなかったり、歯の状態が影響していたり、量が多すぎたり、逆に必要量に届いていなかったりと、理由はさまざまです。そういった部分を多職種と共有しながら調整しています。
澤田:言語聴覚士としては、看護師さんへの嚥下状態の情報提供が多いですね。食事介助の方法をお伝えしたり、逆に患者さんの食事の様子などの情報をもらったりしています。毎日全員を見て回れないので、看護師さんからの情報はとても重要なんです。
また、医師には「嚥下機能としてはここまで回復してきたので、そろそろ食事を始めてもいいですか」と確認したり、「食事形態を少し変更したいのですが、現在の全身状態で問題ないですか」など、相談しながら進めています。私は先生にも栄養士さんにも何かあればすぐ連絡するんですが、当院は相談しやすい雰囲気があるんですよ。先生方もちゃんと話を聞いてくださいますし、看護師さんも栄養士さんもすぐに対応してくださるので、すごく連携しやすい環境だと思います。

―大分中村病院では、多職種が協働する“患者さん中心”のチーム医療を行っています。具体的な内容と役割、そのメリットについて教えてください。
堀:医師や看護師、薬剤師、PT・OT・STなどのリハビリ専門職、検査技師、ソーシャルワーカー、栄養士など、多職種でチームを組み、患者さんを支えるのがチーム医療です。たとえば、NST(栄養サポートチーム)、糖尿病透析予防チーム、がんリハビリテーション、心臓リハビリテーション、骨粗鬆症リエゾンなど、さまざまなチームがあるんですが、栄養課とリハビリ専門職は、その多くに関わっています。
栄養士としては、やはり食事面が中心で、必要なカロリー量や栄養状態、目標に近づくための課題などを整理しながら関わっています。退院が近い患者さんには、退院後の食事についての指導を行ったり、ご家族への説明が必要な場合には、一緒にサポートへ入ったりもしています。
澤田:リハビリ専門職も、チームによって関わり方が変わりますね。言語聴覚士が入るチームもありますし、骨粗鬆症リエゾンなどでは、理学療法士や作業療法士が中心になることもあります。私は現在、NST(栄養サポートチーム)に参加しています。
堀:週に1回のカンファレンスは、検査データや患者さんの1週間の様子をみんなで共有し、医師を中心に今後の方針を話し合ったり、患者さんごとの目標を共有し、各専門職が意見を出し合う場になっています。チーム医療の良さはやはり情報がきちんと共有されていることだと思います。同じ目標に向かって、みんなが同じ方向を見ながら関わっているので、「職種によって言うことが違う」ということが少なくなるんじゃないかなと思います。
澤田:そうですね。それぞれの職種でアプローチの仕方は違いますが、チームの中で一つの方向性にまとめていくので、患者さん自身も混乱しにくいと思います。
堀:少し先の目標まで共有されていますからね。
澤田:はい。「その目標に向かって、誰が何をするか」をみんなで考えながら支援していくので、より患者さんに合ったサポートができるのかなと思います。

―日々の業務の中で大切にしていることを教えてください。患者さんとの向き合い方など、意識していることはありますか。
堀:やっぱりコミュニケーションですね。積極的に話したい患者さんもいれば、あまり踏み込まれたくない方もいる。特に食事のことは、あまり言われたくないと感じる方もいらっしゃるので、その距離感を大切にしながら、少しずつ思いを引き出していくような関わり方を大切にしていますね。“患者さんの個性をつかむ“というか、一人ひとり違うので、みんな同じ対応ではいけないと思っています。
澤田:私も話しやすい雰囲気づくりや、 “その人がもともと食べていた食事”に近づけられることを大切にしています。目標としているのは「最後まで口から食べられること」。患者さんの「食べたい」「飲みたい」という気持ちを、ただ「ダメ」と制限し続けるのは、患者さんにとって辛いことです。だからこそ、いつもギリギリのラインを探しながら、業務に取り組んでいます。嚥下機能としての安全性と、ご本人の楽しみや満足感。その両方のバランスを考えながら、患者さんにとっての最善を見つけていけたらと思っています。

―仕事のやりがいや喜びを感じる瞬間を教えてください。
堀:患者さんから日々の食事の中で「おいしかった」と言っていただけた時ですね。栄養指導を通して数値が改善したり、体調が良くなって感謝していただけたり、実際に成果が見えたときはとても嬉しいです。外来での栄養指導でも、次に来院された時に改善したことや取り組めたことを聞けたりすると、フィットした提案ができた喜びを感じます。また、低栄養状態だった入院患者さんが、少しずつ元気を取り戻して、ご自宅へ帰っていかれる姿を見ると、本当に良かったなと思います。
澤田:嚥下のリハビリに関しては、やっぱり「食べられた」という瞬間ですね。患者さんご本人と話をしながら希望を聞いて、それが実際に食べられるようになった時は、本当に嬉しいです。
入院生活の中での食事は、患者さんにとって大きな楽しみのひとつです。だからこそ、「食べたい」という気持ちを少しでも叶えられた時は大きなやりがいを感じます。患者さんから「おいしい」「久しぶりに食べられた」と聞くと、一緒にリハビリを頑張ってきて良かったと思います。

―最後に、入院を控えている患者さんやご家族へメッセージをお願いします。
堀:栄養課だけでなく、さまざまな職種がしっかり連携しながら患者さんの食事を支えています。安心して過ごしていただけるような環境づくりも大切にしていますし、スタッフもみんな優しく、話しかけやすい雰囲気だと思います。ちょっとした不安や気になることがあれば、気軽に相談してください。
澤田:一人の患者さんに対して、多職種でしっかり情報を共有し、「食事を楽しめること」も大切にしながら、より良い入院生活になるように取り組んでいます。患者さんご本人だけでなく、ご家族のお話や想いも伺いながら、一緒に目標へ向かってサポートしていきたいと思っています。
