OITA NAKAMURA HOSPITAL

Mini[ ミニ記事 ]

サイドストーリー

ウェルビーイングにつながる 自由で、柔軟なリハビリの可能性

大分中村病院では、様々な背景を持つプロフェッショナルたちが日々切磋琢磨しながら、患者さんの生活の質向上を目指して業務に取り組んでいます。本シリーズでは、そんな職員たちの情熱と挑戦を紹介し、彼らの活躍をお届けします。

INFORMATION 今回の話し手

金指真由美(かねざしまゆみ)

理学療法士 リハビリテーション部

金指真由美(かねざしまゆみ)

専門学校を卒業後、理学療法士として大分中村病院に就職。25歳の時、一度退職し、JICA海外協力隊としてタイに赴任し、2年間現地で勤務。帰国後、再び大分中村病院に勤務。現在は急性期病棟で理学療法士として従事すると共に、ウロギネセンターのスタッフとして骨盤底リハビリにも携わっている。

理学療法士としてボランティア活動に従事するまで

金指さんは常に「患者さんが主語」であることを大切に、持ち前の技術と柔軟性でリハビリに取り組んでいます。患者さんが何を求め、何に困っているのかを丁寧に聞き取り、それに応じた適切なアプローチを考え、目標や希望を実現するための支援を行うことが彼女の核となっています。
そんな金指さんが最も楽しさを感じる瞬間は、患者さんの体に変化が現れるとき。自らのアプローチの結果、患者さんの歩き方や姿勢が改善され、「楽になった」という感謝の言葉を聞くと、仕事のやりがいや面白さを強く感じると言います。
「体って本当に面白い。患者さんが少しずつでも治っていくのを見ると、自分がこの仕事を選んでよかったと思う」。 人の身体の仕組みや可能性に魅了されながら、金指さんは患者さんのウェルビーイング向上に向けたサポートに全力を注いでいます。その背景には、JICAでの経験や学びが深く根付いていました。

金指さんがボランティア活動に興味を持つようになったきっかけは、幼少期に祖父から聞いた戦争の話でした。祖父が語る戦争体験は、平和や人の助け合いの重要性を考える原点となりました。また、小学生の頃に読んだ、ポルポト政権下のカンボジアにおける地雷問題を扱った本に衝撃を受けたことが、さらにその思いを強くしました。
「世界をもっと見てみたい」「自分も誰かの役に立ちたい」という思いを抱えながら成長した金指さんは、専門学校時代にJICAのOBである先生と出会い、ボランティア活動を実現するための道筋を知ることができました。

JICA協力隊員としてタイでの活動で得たもの

大分中村病院で現場経験を積んだ後、25歳で一度退職しJICAに参加した金指さんは、タイの政府運営施設に着任しました。この施設では女性で身寄りのない障がい者が多く暮らしており、貧困層やホスピスケアが必要な利用者が多い状況でした。1対400人という看護師やセラピストと利用者の比率や、衛生面の課題など、日本とは大きく異なる環境の中で活動を開始しました。
しかしながら、施設はアットホームで家族のような温かい雰囲気があり、職員と入居者、また入居者同士の距離が近く、助け合いの精神が日常的に根付いていました。例えば、車椅子の利用者を他の利用者が食堂まで連れて行く、みんなでお風呂に行く、入居者同士が食事の分配を行うなど、自主的な協力体制が自然に形成されており、昭和の日本を彷彿とさせるほのぼのとした空間でした。

そんな中で金指さんは、QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)の維持・向上を目的としたリハビリ活動に従事しました。利用者の意欲に応じて個別対応を行い、現地のセラピストに技術や知識を伝えながら、集団体操や道具を使ったリハビリを実施。日本でのグループリハビリの経験を活かし、ボール投げなど楽しめる要素を取り入れたリハビリは、利用者からも好評でした。そんな日本とは大きく異なる医療環境下での活動を通じて「マイペンライ”(なんでもいい、大丈夫、気にしない)」の精神を学び、柔軟で前向きな姿勢を身についたと言います。

近年の活動とウェルビーイングを追求するリハビリ

帰国後に金指さんは大分中村病院に再就職し、現在も理学療法士として勤務する傍ら、ヨガとピラティスのインストラクターとしての活動も行っています。自身の経験と技術を活かし、2018年4月に開設された、女性の尿もれなどの女性下部尿路症状や骨盤臓器脱に対し、治療を行うウロギネセンターでは、専門的なリハビリを担当し、女性の生活の質向上に貢献しています。

JICA協力隊後の現在も、国際協力活動を続けています。障がいを持つ子どもたちがスポーツを通じて生活の質を向上させることを目的に、2022年から、「ペルーにおける障がい児スポーツ指導力強化及び普及プロジェクト」に参加しています。これまで、現地訪問やペルー人スタッフを日本に招待し、日本研修、またオンラインで遠隔指導を行ってきました。2024年11月28日から12月5日に、これまでの活動成果を評価するため実際にペルーへ赴きました。現地では、これまで指導してきた内容が遂行されており、日本の知見を活かしたアプローチの可能性を感じました。

こうしたさまざまな経験を通して、リハビリにおいてもう少し自由でフランクな関係性があっても良いのではないかと考えます。ある日のこと、リハビリに前向きではなかった患者さんと屋上で過ごした時間は、ただ背中を撫でたり、話をしたりするだけのものでした。それでも患者さんは「ありがとう」と感謝の言葉を口にしました。この経験を通じて、患者さんとのつながりや心の支えそのものがリハビリの一部であると感じるようになりました。

とはいえ、リハビリは技術職なので、追求すべき部分はしっかり取り組むという姿勢も忘れてはいけないと感じています。患者さんのウェルビーイングを目指す上で大切なのは、患者さん自身の望みや課題に寄り添いながら、自由で柔軟な発想でリハビリを進めていくこと。そして、それを支える技術や知識を絶えず追求していくことです。
技術と柔軟性を両立させるセラピストとして金指さんの活動や経験は、これからのリハビリに新たな可能性を示すとともに、患者さんの心と体の豊かさを支える一つの道しるべとなっています。

大分中村病院ウロギネセンターでは、臓器脱、排尿、排便症状でお悩みの方からのお問合せをメールで受け付けております。どうぞお気軽にご利用下さい。
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