24時間体制で利用者を支える訪問看護ステーション 病院併設だからこそ届けられる“安心”
2023年、大分中村病院の訪問看護は「訪問看護ステーション」として生まれ変わった。24時間対応の実現、他院からの依頼をスムーズに受けられる体制整備、病院併設による密な連携。地域で暮らす人々の“その人らしい生活”を支えるための基盤が着実に整えられた。
その中核を担うのが、看護40年以上のキャリアを持つ師長・仲摩と、「やりたいことを諦めないための支援」を大切にする作業療法士・五反田だ。
訪問看護は、自宅で暮らす人の日常を支える仕事。病気や怪我、加齢などで生活に不安を抱える人たちが、住み慣れた自宅でできる限り自立した生活を続けられるよう、看護師などの医療専門職が自宅を訪問してケアを行う。

その内容は多岐にわたる。健康状態の観察や日常生活の支援、薬剤管理、医療機器の管理、終末期の看護、家族介護者へのサポート、リハビリの補助など、利用者の生活を整え、安心して過ごせる環境をつくることが訪問看護の役割である。「利用者さんが望む場所で、望む暮らしを実現できるようにサポートすることが私たちの役割です」と仲摩は語る。
大分中村病院訪問看護ステーションの大きな強みは、病院との高度な連携力にある。入院中の患者の状態がわかる電子カルテ情報を訪問看護と共有できること。担当医や病棟スタッフ、ソーシャルワーカーとの密な連携ができること。退院後の状態変化にもすぐに対応できる体制が整っていること。
また、看護師と作業療法士が同じステーションに所属している点も大きな特徴だ。大分中村病院には経験豊富なリハビリスタッフが多く、必要に応じて代行訪問に入ることもできるため、利用者にとっては心強いサポートとなっている。
現在の体制は、看護師6名、作業療法士1名、事務サポート1名。認定看護師や糖尿病療養指導士も在籍し、専門性の幅が広いことも強みのひとつだ。こうした確かな基盤があるからこそ、24時間対応という難しい支援も安定して提供できる。
そんなチームが大事にしているのは病院が「こころざし」として掲げる「向き合う」という姿勢。「私たちは利用者さんだけでなく、その家族、医師に寄り添い、治療や生活を支えることが一番の目標です」と仲摩は言う。
看護師・仲摩 —40年の看護人生から生まれた“寄り添う力”
訪問看護師長としてスタッフを束ねる仲摩が看護師を志したのは、小児期に腸の病気で命の危機を経験したことがきっかけだった。「人に携わる仕事をして誰かの力になりたい」。その想いを胸に抱き、看護の道へ進んだ。
就職先に大分中村病院を選んだ理由は、さまざまな医療的な処置やケアができる病院だったこと。入職してからは、良き先輩や仲間に恵まれ、病棟看護やがん看護など多彩な領域を経験してきた。気づけば 40年以上、病院とともに歩んできたことになる。

「40年の間に病院の方針も大きく変わりました。そうした変化の中で、今のように近代的な病院で勤められていることは、本当に幸せだと感じています」と振り返る。
長い看護人生の中でも、特に心に残る出来事がある。
がん病棟で担当した、40代の母親のケースだ。病状が進み余命が短いことを知りながらも、心配をかけたくない一心で「遠方の大学で就職活動中の息子には知らせないでほしい」と訴えていた。しかし日ごとに弱る身体。医師やスタッフとカンファレンスを重ね、話をしても、本人の気持ちは揺るがない。
しかし、仲摩は問い続けた。本当に、このままで後悔しないのか。患者の心の奥にある揺れや葛藤に寄り添い、対話を重ねる中で、次第に本音が見えてきた。そして、最終的には「息子に伝えてほしい」と、自らその想いを託してくれた。
その言葉を受け、仲摩は遠方の息子に連絡する決断をした。すぐに息子は帰省し、最期の数日間をそばで過ごした。その後、届いた「母に会わせてくれてありがとう」という言葉は、今も仲摩の胸に深く残っている。
「寄り添うとは、ただそばにいることではありません。本人の想いや葛藤に深く踏み込み、一緒に“最善”を探すこと。家族全員で納得して終わることができるのか、在宅看護としてはそこまで入っていく必要があるのかなと思います」。穏やかな語り口の奥には、揺るぎない信念があった。

がん患者のケアでは、看取りに立ち会うことも多く、患者や家族の“人生の分岐点”に寄り添う場面も数えきれないほどあった。その中で、仲摩は何度も耳にした。
「生きて家に帰りたい」、「自宅で最期を迎えたい」。そんな想いに触れるたび、訪問看護の必要性を痛感するようになった。
当時は院内に本格的な訪問看護ステーションはなく、“みなし訪問看護”として限られた時間帯だけの関わりにとどまっていた。しかし2023年、大分中村病院は新たに訪問看護ステーションを開設し、24時間対応の体制を整える大きな転換点を迎えた。そのタイミングで、仲摩にステーション師長として白羽の矢が立った。
病棟での経験も、がん患者と向き合ってきた時間も、“家に帰りたい”という声に寄り添ってきた日々も、すべて訪問看護で活きている。様々な経験を重ねた今、仲摩は、生活の場に寄り添う訪問看護の最前線へと歩みを進めている。
作業療法士・五反田 — “やりたいこと”を諦めないリハビリ
仲摩のそばでチームを支えているひとりが、作業療法士の五反田だ。訪問看護ステーションにおける作業療法士の役割は、看護プランの中で必要に応じて専門的なリハビリを提供することにある。認知症が強く出ていたり、転倒を繰り返したり、家族の介護のもと生活しているなど、そうした利用者に対して、動作訓練や環境の整備、介助方法の指導など、“生活を支えるためのリハビリ”を行う。

そんな五反田が医療の道に興味を持つようになったのは、祖父母の死がきっかけだった。生前、祖父がリハビリを受けていたという話を聞き、医療職を調べる中で作業療法士という仕事を知った。「できないことをできるようにしていく。障がいを持つ人の生活そのものを支援できる。その役割に深く惹かれ、作業療法士を目指しました」。
大分中村病院との出会いは、専門学校在学中の実習だった。手術の見学に積極的に連れて行ってくれる先輩、患者に寄り添いながらケアを続けるスタッフの姿。その光景が強く心に残り、「こんな先輩たちがいる場所で働きたい」と入職を決めた。
入職後は急性期から回復期、地域包括ケア病棟まで幅広く経験した。経験を重ねるうち、「在宅の生活も支えたい」と訪問リハビリテーションに携わるようになる。さらに訪問看護ステーションが開設されるタイミングで「看護師さんと一緒に在宅看護に携わってみたい」との想いから、訪問看護の道へと進む。

五反田は言う。「リハビリを行う事に変わりはありませんが、訪問リハビリと訪問看護でのリハビリは利用者の層がより重症な方が多いように感じます。運動だけを行うのではなく、在宅では多職種や他の医療機関と利用者・ご家族との連携がより密接に絡み、全体を見渡す必要があります」。
そんな中、五反田の今につながる想いをさらに強くしたのが、ある利用者との出来事だった。その利用者は難病を抱え、ほとんどベッド中心の生活を送っていた。「美味しいものが食べられればいい」と控えめな望みを口にしていたが、一年ほど関わる中で、ふとこぼした。「旅行に行って、温泉に浸かりたい」。
その願いをなんとか叶えたい。五反田は看護師や家族と丁寧に相談を重ね、入浴しやすい温泉施設の条件、必要な動作、家族の負担、移動手段など一つひとつを何度も検討し、実現することができた。
「病気で障がいを負ったとしても生活や自分がやりたいことを諦めてほしくない。やりたいことを私が支援できるような関わりが持てたらいいなと思います」。この経験が今のリハビリを行う軸につながっている。
小さな悩みでもなんでも、まずは気軽に相談を。
現在、大分中村病院訪問看護ステーションの利用者の約40%は他院・ケアマネージャー・クリニックからの紹介によるものだ。院内の患者にとどまらず、地域全体から信頼される在宅医療の拠点へと広がりを見せている。また、同ステーションでは、保険制度の枠におさまらない自費サービスも実施している。結婚式への同行、葬儀の付き添い、外出や旅行の支援など、人生における大切な時間を、安心して迎えられるように支えるための柔軟な取り組みだ。
こうした訪問看護のサービスは、在宅での生活に困りごとや不安があれば、誰でも利用できるという。高齢化が進む今、ひとり暮らしの高齢者や遠方に家族がいる高齢者も増えている。「そうした方でも訪問看護が入ることで、安全に家で過ごすことができます。治療の合間や治療後は不安も大きいですが、家族とも連携して情報共有しながら、ご本人もご家族も、双方が安心して過ごせる体制を整えられるのが訪問看護の強みです」と仲摩は語った。
五反田も言葉を添える。「小さな相談からで大丈夫です。経験豊富なスタッフが揃っているので、まずは頼ってください」。
大分中村病院訪問看護ステーションは、確かな専門性と揺るぎない姿勢で、地域の暮らしを支え続けている。その背景には、“医療者としての誇り”と“地域の生活を守る責任感”が力強く宿っていた。訪問車が朝の光の中へ走り出す。その一台一台が、誰かの暮らしを支えに向かう。その日常は静かに、確かに地域の生活を支えている。

※訪問看護ステーション利用方法
主治医に相談していただくか、担当ケアマネージャーさんにお問い合わせください。入院中の方は医療機関にお尋ねください。主治医やケアマネージャーさんから訪問看護ステーションに連絡が入りましたら、訪問看護をご利用する日程などを調整させていただきます。
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