退院を見据え、自宅での生活環境が心配になる
中村さんは病院でのリハビリも順調に進み、退院が少しずつ現実味を帯びてきた頃。ふと、退院後の生活について不安を口にしました。
退院してから自宅でうまく生活できるか心配だな。うちは階段も急だし、ところどころ段差もあるしな…。娘はサポートしてくれると言ってくれてるが、あまり迷惑をかけたくないな。

お父さん、そんなこと言わないで!無理はしないでよ…。(とはいえ、私もどこまでサポートできるか自信がないな…。仕事もあるし、どうしよう…。)

娘の心の中には葛藤もありましたが、それでもお父さんに無理はさせたくないという気持ちが強くあります。そこに、タイミングよく担当のリハビリスタッフが病室を訪れました。

中村さん、ご家族の不安も含めて、その気持ちはとてもよく分かります。今日は、先日少しお話ししていた『家屋調査』について、改めてご説明しようと思って来ました。
家屋調査とは
家屋調査?あぁ、前にも少し聞いたけど、正直、住み慣れた家だし大丈夫だろうと思ってたよ。


そう感じる方は多いんですが、退院後は“今の体の状態”に家が合っているかが大切なんです。入院前と比べて、思った以上に動きづらさを感じることもありますし、特に一人暮らしの方は“転ばないための備え”が重要です。
たしかに…。もし家で転んだりしたらと思うと心配です。


そこで家屋調査を行い、ご自宅の環境を実際に確認します。どこに段差があるか、手すりは必要か、今使っている歩行補助具が合っているか…。リハビリや福祉用具の選定も含めて、退院までに必要な支援が明確になりますよ。
なるほど。“今の体”に合った暮らし方を考えるってことか。


そうなんです。そして、家屋調査はご家族にとっても、“退院後の生活をどう支えるか”をイメージできる大事な機会でもあります。
家屋調査の流れ
調査の所要時間は、移動時間を除きおおよそ1時間程度です。対象者となった患者さん、ご家族に日程調整のご相談をします。
決定したお時間までに当院専用車でご自宅まで担当理学療法士と社会福祉士等が伺います。ケアマネージャーがいる場合は同行頂きます。
ご自宅での生活範囲や行動をお聞きしながら、福祉用具の選定や住宅改修の有無を検討します。
調査結果をもとに退院までの目標設定を見直し、日々の援助に取り入れていきます。
家屋調査の計測場所はこんなところ
家屋調査って、実際にはどんなところを見るんですか?事前にポイントを知っておきたいんですけど…。


家屋調査では、まず“1日の動線”を確認することが大事なんです。朝起きてから寝るまで、どこを通って、どのように動いているのか。その流れの中で、つまずきやすい場所や動きにくい箇所をチェックしていきます。
病院はバリアフリーだし、手すりとかもあって安全な環境が整えられているけど、家に帰ると勝手が違いそうですね…。


そうなんです。中村さんご本人の動きに合わせて確認したいので、必ずご本人には立ち会っていただきたいです。そして、できればご家族の方にもぜひ立ち会っていただきたいです。
家の様子を知っておくと、サポートしやすくなりますもんね。


ありがとうございます。では、家屋調査で確認する代表的な場所をいくつかご紹介しますね。
▼階段の高さや幅、段数、勾配、手すりの有無などを確認

階段の角度や段数を確認し、手すりが必要かを判断します。
▼上がり框(玄関内の段差)の高さ

玄関内の段差の高さを計測。つまずき防止や段差解消の必要性を確認します。
▼廊下等の手すりの高さ、位置

歩行時に掴む場所が適切かを確認。高さ・長さ・握りやすさのバランスを見ながら検討します。
▼トイレの座面の高さ

立ち上がり動作に大きく関わる座面の高さ。体の状態に応じて高さ調整や補高器具の使用も検討します。
▼トイレ内の手すりの位置と高さ

トイレ内での立ち座りや体の安定性をサポート。設置位置と高さのバランスが重要です。
環境を改善するならいくらかかるの?
家屋調査の内容を一通り聞いた後、娘さんが気になる点を口にしました。
家の中を色々見てくれるのは助かりますけど…正直、その後にかかる費用がちょっと心配で。たとえば、手すりをつけるとしたら、どれくらいかかるんですか?


実は、手すりは購入だけじゃなくて、レンタルという選択肢もあるんです。たとえば、取り付けが簡単な“置き型手すり”なら、月々数百円から借りることができます。体の状態が良くなって、手すりが不要になったときも、レンタルなら返却・撤去がスムーズです。
なるほど。必要な間だけ借りられるなら、無駄もないな。


はい。レンタルではなく住宅改修により設置する場合、介護保険をお持ちの方は、“20万円まで”を上限として助成を受けられる制度があります。
20万円まで…。でも、それって1年ごととかじゃなくて?


そうなんです。原則として、お一人につき一回です。そのため、使いどころをよく考えて活用することが大切なんです。
たしかに、最初に全部使ってしまうと、将来もっと必要になったとき困りそうですね。


住宅改修をするか、レンタルで対応するかは実際に動作を確認して決めていきましょう。介護保険でレンタルをする場合は、その他のサービスも含めて検討する必要があるので、担当のケアマネージャーとも相談しながら、最適な方法を一緒に検討していきましょう。
費用のことまで考えてくれるなんて安心だな。無理なく、長く住み慣れた家で暮らせるのが一番だからな。

ほんと、ここまで詳しく教えてもらえるなんて思ってませんでした。お父さんのためにも、ちゃんと環境を整えてあげたいです。家屋調査、ぜひお願いしたいです!

※要介護者等が手すりの取り付けなどの住宅改修を行った際に、20万円を上限に費用の7〜9割が支給(償還払い)される制度があります。また、転居や要介護状態の著しい悪化などにより、上限額が再度設定される場合もあります。詳しくはこちら。
まとめ
家屋調査は必須ではありませんが、退院後の生活をより安全・安心なものにするために、患者さんの状態に合わせて提案をさせていただきます。
患者さんが退院後に戻るのは、長年住み慣れた「ご自宅」です。しかし、入院前とは身体の状態が変わっていることも多く、これまで当たり前にできていた動作が、退院後には思わぬ負担になることもあります。だからこそ、退院前に専門職がご自宅を訪問し、生活環境と身体の状態のギャップを丁寧に見つけ、適切な改善方法をご提案しています。家屋調査の内容は、退院後のリハビリ方針や支援内容にも反映され、患者さんにとって「その人らしい暮らし」を支える大切な一歩となります。
家屋調査をご希望の方は、当院のスタッフまでお気軽にご相談ください。
