
病院は、病気を治すだけの場所ではありません。患者さんやご家族が、少しでも安心して過ごせる時間、すなわち「ウェルビーイング(満たされた状態)」を提供することも、私たち病院職員の大切な使命です。本企画では、現場で働く職員たちが、日々の業務の中でどのような思いを持って患者さんと向き合っているのかにスポットを当てます。
今回は、職員一人ひとりに、日々大切にしていることや、その背景にある経験について話を聞きました。お聞きしたのは、次の3つの視点です。
- Q1. 日常の心がけ(不安を和らげるために意識している言葉かけや、雰囲気づくりについて)
- Q2. きっかけとなるエピソード(その価値観を大切にするようになった、印象に残っている経験)
- Q3. 私のキーワード(想いを「ひとこと」で表すとしたら)
記念すべきシリーズ第1回となる今回は、職種の異なる3名の職員が登場します。それぞれの「フリップ」に書かれた言葉と、その奥にあるストーリーにぜひ触れてみてください。
看護師 Hさんの場合




専門用語を使わない。その「ひと手間」が安心を育む。
1. 心掛けていること
できるだけ専門用語を使わずに、患者さんやご家族に分かりやすい言葉で説明することを心がけています。患者さんやご家族が理解を得られないまま話が進むと不安につながってしまいますので、「ここまでで分かりにくいところはありませんか?」とこまめに確認するようにしています。あとは、何気ない声掛けと、お話に耳を傾けることを大切にしています。
2. そう思ったきっかけ
看護師になりたての頃、飛び交う専門用語に私自身が不安を感じたことがありました。「専門職の私が分からないなら、患者さんはもっと怖いはず」という当時気づいたことが、今の私の原点です。また、ある寝たきりの認知症の患者さんのご家族から「日々の何気ない声掛けに救われた」と言っていただいたことも大きな経験でした。
3. 「傾聴」を選んだ理由
これまでの経験から、特別な治療だけでなく、日常の些細な様子を伝え、お話を丁寧に聴くこと。その当たり前の積み重ねが、誰かの心を支える力になるのだと学びました。
看護師 Iさんの場合




言葉の奥にある「本当の願い」に気づける看護を
1. 心掛けていること
私が看護師として大切にしているのは、「見る、観る、看る。」という3つの視点です。「目で見る」、「観察で観る」、そして「看護の観点で看る」。「痒いところに手が届く」ような看護師を目標にしています。
2. そう思ったきっかけ
自分の言葉で上手く伝えられない患者さんやご家族と接した時、表の言葉だけを聞き、奥に隠れた本当の気持ちに気づけなかったことと、寝たきりで自分の思いを表出できない患者さんの痛みや、苦痛を感じとることができなかった経験から、痒いところに手が届く看護師でありたいと考えました。
3. 「思いやり」を選んだ理由
相手を自分の家族のように想うことは、決して簡単ではありません。けれど、少しでもその心に寄り添おうとする「気遣い」や「心遣い」を忘れたくない。常に相手の立場に立って考える「思いやり」の精神を、これからも大切にしていきたいです。
看護師 Iさんの場合




立ち止まり、目線を合わせる。そのひとときが安心に変わる
1. 心掛けていること
患者さんと接する時、私は必ず「手を止めること」を徹底しています。何かをしながらお話を伺うのではなく、作業を中断し、目線の高さを合わせて、最後までじっくりと耳を傾ける。全身で「あなたの声を聴いています」という姿勢を示すことが、不安を和らげる第一歩だと信じています。
2. そう思ったきっかけ
ある夜勤中、患者さんから「あなたたちが持ってきた薬を自動的に飲んでいるけれど、中身が分からない」と打ち明けられたことがありました。一錠ずつ丁寧に説明すると、とても納得してくださったんです。ただ「飲まされる」のではなく、「自分のために必要だ」と納得していただくこと。それが、患者さんが前向きに療養生活を送るための大きな力になると痛感しました。
3. 「満足度」を選んだ理由
夕方の時間帯などは看護師の人数も減り、バタバタしています。患者さんは「忙しそうだから」と遠慮して、分からないことや要望があってもナースコールを鳴らすのをためらってしまうこともあるようです。そんな中、自分の想いを表出してくれたことに対して、しっかりお応えすることが大切だと感じています。
「次は、どんな『 』に出会えるでしょうか?」
次回の更新も、どうぞあたたかい気持ちでお待ちください。