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第16回大分県理学療法士学会 抄録


第16回大分県理学療法士学会/大分県別府市/2014.3.9

超音波画像を用いた下腿三頭筋筋腱複合体の収縮動態の解析〜運動条件の違いによる粘弾性の変化について〜

リハビリテーション部
○谷口純平、井手宗樹、紙谷浩喜

キーワード:超音波 筋腱複合体 粘弾性

【はじめに、目的】
下腿三頭筋は姿勢の保持やロコモーションにおいて重要な役割を果たす下肢筋の一つである。歩行では下腿三頭筋の活動が推進力の大きな供給源であるとされている。また川上らは、腓腹筋の筋線維は立脚相において等尺性に近い活動をしながら腱組織を伸長し、腱組織に蓄えられた弾性エネルギーを放出することによって効率的な運動を行うと報告している。今回、筋腱複合体の粘弾性に寄与する動態を超音波を用いて検討したので報告する。

【方法】
対象者は整形外科的疾患の既往がない健常人30名(男性18名、女性12名、年齢24.5±2.6歳、背屈角度10.2±3.3°)で、対象筋は左腓腹筋内側頭とした。測定肢位は腹臥位にて膝関節完全伸展位・足関節中間位の状態で足底を壁に接地させた状態で、足関節底屈の等尺性収縮を行わせた。筋腱移行部の移動量の測定は、超音波画像診断装置(GE横河メディカルシステム社製LOGIQ S8)を使用し、画像表示モードはBモードで12MHZのプローブで撮影を行い、内臓デジタルメジャーを用いて行った。この時の等尺性収縮時の移動量を基準とし、腰背部を壁に接地させた立位にて20°背屈位で30秒スタティックストレッチ後の等尺性収縮時の移動量(以下:Ex.1)、腰背部を壁に接地させた立位にて20°背屈位からのカーフレイズ10回後の等尺性収縮時の移動量(以下:Ex.2)を比較した。各項目は影響が出ないように全て別日に測定した。統計学的解析は多重比較検定(Dunnett法)を行い、有意水準は5%とした。

【倫理的配慮、説明と同意】  
対象者には、ヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ本研究の目的及び内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得てから計測を行った。

【結果】  
基準動作の筋腱移行部は6.6±3.3mm近位に移動した。(Ex.1)においては6.3±2.8mm近位に移動したが、基準動作の値と比較すると有意差は認められなかった。一方、(Ex.2)においては9.2±3.1mm近位に移動し、基準動作の値と比較すると有意差が認められた(P<0.01)。

【考察】  
筋には収縮要素と直列弾性要素がある。直列弾性要素にはミオシン分子そのものに由来するものと、腱などの結合組織に由来するものがある。等尺性収縮時に前者は筋長の約0.5~1.0%程度伸張されるのに対し、後者は筋長の10%以上伸張されるものもある。つまり、腱などの結合組織に伸張を加えることができれば筋腱移行部の移動量は増加し、筋腱複合体の粘弾性も改善する。
静的ストレッチングは、腱のstiffnessに対する影響が明確にされておらず、筋の結合組織のみに変化を生じさせていることが示されている。(Ex.1)では腱への影響が少ないため、移動量の変化が少なかったと考えられる。一方で、動的ストレッチングは腱stiffnessを有意に減少させることが示されている。(Ex.2)では筋が伸張された状態からの筋収縮で腱部に動的な影響を及ぼすため、移動量が大きくなったと考えられる。本研究結果より筋伸張位から筋収縮を行う運動は、筋腱複合体の粘弾性を獲得できるということが示唆された。

2014年03月27日(木) No.821 (学術活動::抄録)

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