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第22回日本障害者スポーツ学会 抄録


第22回日本障害者スポーツ学会/和歌山県和歌山市/2013.1.26-27

ロンドンパラリンピックに医療班の看護師として参加して

看護部1)、整形外科2)
○阿部尚子1)、山田みゆき1)、中村太郎2)

1、はじめに
ロンドン2012パラリンピック競技大会 (14回夏季大会)がイギリスのロンドンにて開催された。
競技レベルが高まる中、選手達のバックアップ体制の充実も大きな役割を占めている。今回、医療班として医師3名・看護師3名の一人として、出場選手の健康・心のサポートにあたった。幸いにも大きな負傷者もなく終える事ができたが、今大会を振り返り、症例を通し看護師として感じたパラリンピックの医療支援について一部所感を交えて報告する。

2、目的
医療班、看護師として選手の健康サポートに携わりどのようなサポート体制が必要だったのか検討した。

3、実施内容
2012年8月29日から9月9日、ロンドン(イギリス)においてロンドンパラリンピックが開催された。日本選手団は、選手134名、役員121名、計255名であった。
サポート体制として、医務室の勤務体制は、医師・看護師でペアを組み3チームに分け選手の緊急対応に備え24時間体制とした。診療介助内容としては、バイタル測定、輸液管理、温・冷罨法、外傷処置介助、注射処置介助、生活指導、清拭、シャワー浴介助、食事の援助などを行った。
健康管理として、長期間の日常生活の変化に伴う注意喚起を促した。また、選手の体調を把握するためコンディションチェッック表を活用した。

4、結果報告 
診療状況では、選手役員を含め延べ303名の受診があり、来院時間帯は昼夜を問わず受診者があった。受診者は、内科疾患178名(59%)。整形外科疾患、114名(38%)。その他11名(3%)であった。今大会は、夏期大会であったが平均最高気温22℃、平均最低気温11℃であった。

【症例】
年齢:30歳 性別:女性
障害の種類:視覚障害
参加競技:柔道
現病歴:準々決勝の試合中受傷。右肩鎖関節脱臼と診断され,ポリクリニックにて固定した。
私達看護師は、日常生活において利き手を固定されていた為シャワー浴介助や、着替え、時に食事の援助などを行った。幸いにも疼痛に関しては、鎮痛薬と固定にて自制内にて経過し、その後の経過についても看護援助を通し観察していった。試合に敗退したこと、負傷した事などもあった為か、ネガティブな発言もみられた。

5、考察
今回、パラリンピックの医療班として参加するまでは、スポーツの大会における医療は、外傷や整形外科の受診が多いと考えていた。しかし、整形外科疾患より内科疾患の受診者が多かった。内科疾患のうち、呼吸器疾患が上位をしめていた。今大会、日本とロンドンの気温差は、10℃前後であった。気候だけが要因とは言いがたいが、事前にその国の気候や特色などを考慮しそれに伴う疾患を予測し予防に努め準備していく重要性を実感した。
医療班の勤務体制は、24時間医務室を開放しいつでも対応できる状況にした。昼夜を問わず受診者があった事を考えれば、選手の立場に立った体制であったと思われる。
柔道選手の症例では、疼痛コンロールとメンタル面でのサポートの必要性を感じた。幸い、患肢の固定と内服薬にて疼痛コントロールは行えていた。メンタル面において受傷直後はネガティブな発言もみられたが、この選手においては、看護師との関わりも多く看護援助を通しコミュニケーションをもつことができた。
今回、パラリンピックの医療班として、選手の健康面のサポートと精神面のサポートをしていきたいと挑んだが、「すべての人間関係は、信頼関係を構築するコミュニケーションから始まる」と小森1)は言っているように、ある一定のコミュニケーションを得ていないと信頼関係を構築するのは難しいという事を痛感した。先日行われた大分国際車椅子マラソンに救護班として参加した際、日本代表選手も出場しておりコミュニケーションがスムーズに図れた。その際に、パラリンピックの医療班として参加する以前から、多くの大会に参加していき、コミュニケーションや信頼関係を構築することが、選手の精神サポートをしていく上で必要になってくると思われる。

6、おわりに
1、ロンドン2012パラリンピック競技大会 (第14回夏季大会)に医療班看護師として参加した。
2、受診者数は303名で整形外科疾患より内科疾患の方が多かった。
3、精神サポートを行うには、パラリンピックに参加する選手達との交流を大会前から構築する必要があった。
4、今後派遣される看護師が満足なサポートが出来るよう、今回学んだ内容をマニュアル化していきたい。


引用文献
1)小森康充 kevin.livedoor.biz/archives/1682710.html (2012/11/14) 
参考文献
・陶山哲夫:Clinical Rehabilitation、障害者スポーツの概略、vol 21、No8、2012、P734〜P741
・鳥取部光司 帖佐悦男:Clinical Rehabilitation、障害者競技スポーツの医学的支援、vol 21、No8、2012、P758〜P762
・山田みゆき:九州救急医学雑誌、アテネパラリンピックの医療体制、第5巻、第1号
2013年02月07日(木) No.763 (学術活動::抄録)

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