令和元年5月9日(木)に「がん化学療法・緩和ケア勉強会」が開催されました。当院では、最先端のがん治療と最善のケアを患者さんに提供するために、定期的な勉強会を開催しており、医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどが参加しています。
はじめに日本化薬株式会社の上杉哲也さんより「消化器癌化学療法に対する副作用対策」をテーマに話があり、主に口内炎、味覚異常、流涙症の発現機序、症状、発現しやすい時期、評価、対処法、患者指導のポイントについて説明がありました。口内炎が悪化すると食事が困難になり、患者さんのQOLや栄養状態に影響を及ぼすため、口腔ケアなどの患者指導が非常に大切であるとのことでした。味覚異常も同様に、食事が美味しく食べられず食欲不振に陥ることで栄養状態に影響が及ぶことがあり、味覚異常が長期間継続する場合は治療意欲の低下にもつながることがあるので、早期のケアによるQOLの維持が重要と話がありました。また涙があふれたり涙で目がにじんだりする症状の流涙症は、抗がん剤による角膜障害や涙道狭窄・閉塞などが原因として考えられていますが、対処が遅れると角膜障害の進行や視力低下につながることもあり、早期の発見が大切と話がありました。
次に、外科部長・腫瘍外科部長の麓 祥一医師より「つらさの包括的評価と症状緩和」をテーマに話がありました。はじめに、病気の治療のみでなく、痛みをはじめとする苦痛(つらさ)にも目を向けることが大切とし、まずは“開かれた質問”で患者さんが心配していることを聞くこと、また症状が生活に及ぼしている支障を聞き、その上で症状緩和の目標設定を患者さんと一緒に行うことが大事と話がありました。次に苦痛のスクリーニングでは、スクリーニングで終わるのではなく、スクリーニングされた苦痛について包括的な評価を行い、その評価に対して適切かつ速やかな対処(症状緩和)を行うことが重要であるとのことでした。その後がん患者さんの仮想症例をもとに、その患者さんが何に対して「つらい」と言っているのか、全人的苦痛(身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルペイン)を視点においた評価と適切な対応について皆で一緒に考えながら勉強していきました。
大分中村病院では定期的な勉強会を通じ、最新の医療情報をスタッフ全員が共有し、一人ひとりの患者さんそれぞれに応じたがん治療を提供できるよう精進してまいります。
(経営戦略部 羽田野)