社会医療法人恵愛会 大分中村病院

文字サイズ

第60回 がん化学療法・緩和ケア勉強会を開催

4月12日(木)に「がん化学療法・緩和ケア勉強会」が開催されました。当院では、最先端のがん治療と最善のケアを患者さんに提供するために、チーム医療の充実を目的に定期的な勉強会を開催しております。今回は、医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど54名が参加しました。
はじめに、中外製薬株式会社の中島雄一さんから、抗がん剤の副作用対策の中でも特に皮膚障害対策についてお話がありました。抗がん剤による皮膚障害の主な症状は、皮疹(発疹・発赤)、皮膚乾燥症、爪が剥がれる爪囲炎、手足の皮膚が剥がれる手足症候群などがあります。こういった皮膚障害が起こるのは、表皮の細胞分裂が障害され、皮膚の正常な新陳代謝が妨げられるからだそうです。表皮のバリア機能が損なわれ、保湿・バリア機能が低下し、皮膚の乾燥や亀裂、菲薄化(皮膚が薄くなること)、色素沈着などが起こります。中島さんは、こういった皮膚障害はアレルギー性や中毒性とは違い、抗がん剤の再投与が可能で、皮膚障害が発現してもすぐに中止せず、この皮膚障害の対策をしながら抗がん剤を投与し続けることが大切ですと話していました。またスキンケアの指導の方法として、患者さんに写真を見せながら説明をすること、患者さんの背景を聞きながら一番適したケアの方法を一緒に考えていくこと、ご家族を交えて説明し協力を依頼することなどが大切だと話しました。その他にも、予防的スキンケアのポイントとして、①清潔、②保湿、③外的刺激からの保護をあげ、それぞれのポイントについて詳しく説明しました。
続いて麓医師より「緩和ケア概論~患者の視点を取り入れた全人的なケアを目指して」をテーマに話がありました。まず、ホスピスや緩和ケアの歴史を振り返りながら「従来のがん医療では、抗がん治療から緩和ケアに急な切り替えがなされ、緩和ケアは『看取りの医療』と、とられがちでしたが、現在では、がんと診断された時から提供されるべきケアと位置付けられています」と話がありました。さらに緩和ケアにおける課題として、「苦痛(つらさ)を和らげること」「患者さんの気がかりに気づくこと」「様々な場面で提供できる体制があること」の3点を取り上げ、それぞれについて詳しく説明がありました。
麓医師は「緩和ケアは“がん”だけでなく、全ての病気が対象となるケアであり、患者さんやご家族の支えになるとても大切なものです。そういう視点で1年間通して勉強してほしいです」と話し、最後にまとめとして「緩和ケアは病気の時期や治療の場所を問わず提供され、苦痛(つらさ)に焦点があてられ、つらさとともに、病気に伴う患者さんの生活の変化や気がかりに対応することが大切です。また、さまざまな場面で切れ目なく、緩和ケアを受けられることも大切です」と話しました。
大分中村病院では定期的な勉強会を通じ、最新の医療情報をスタッフ全員が共有し、一人ひとりの患者さまそれぞれに応じたがん治療を提供できるよう精進してまいります。
(経営戦略部 羽田野)