3月11日(日)、当院6階研修室において「第1回食道がん患者会」を開催致しました。この患者会は、食道がんの治療をされている患者さんやご家族、ご家族を食道がんのため亡くされたご遺族の方を対象に、日頃の悩みや今の想いを共有して頂く場です。今回は51名の方にご参加いただきました。
まず初めに、会の責任者である当院外科部長の麓祥一医師および中村太郎理事長より挨拶がありました。麓医師は「大分県の食道がん治療は、全国でもトップレベルだと自信を持って皆さんの治療に関わらせて頂いています。参加された皆さんにとってこの会がとても大切な場所・時間になることを期待しています」と挨拶しました。
次に、大分大学医学部附属病院 消化器・小児外科学講座の柴田智隆先生に「食道がん治療の現状」をテーマに講演をして頂きました。講演の冒頭、食道がんの現状として、現在年間約2万人の方が食道がんにかかり、約1万人の方が亡くなっていることを報告し、食道がん切除後の臨床病期別5年生存率や食道がん治療のアルゴリズム等についても詳しく説明がありました。また、新しい手術療法として縦隔鏡を用いた「非開胸食道がん手術」やロボット支援手術「ダヴィンチ」を紹介し、手術療法も少しずつではあるが確実に進歩していると話しました。また、内視鏡を用いた新たな低侵襲治療の光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)についても詳しく紹介しました。柴田先生は「大分県では食道がん治療のほぼ全ての選択肢を受けることができます。受けられないのは重粒子線治療ぐらいだと思います。私たちが行える治療の範囲内で、県内の食道がん患者さんを治していけるよう今後も努力していきたいです」と話していました。
次に、帰巖会みえ病院 摂食・嚥下障害認定看護師の安部幸さんに「食道がん患者さんの飲み込みの障害とリハビリテーション」をテーマに講演して頂きました。講演の冒頭、食道がん患者さんの嚥下障害のメカニズムや、嚥下障害や食欲低下から引き起こされるサルコペニアについて詳しく説明がありました。また、食道がん術後の患者さんはよく食べ物が喉に引っかかり飲み込めないことを話し、上手く飲み込む方法として「食べ物が喉に引っかかる人はよく噛み砕いて、飲み込んだ後も口に入っていなくてももう一度飲み込むようにしてください」と紹介しました。また、気管に入ったものを出すための咳訓練として、鼻で大きく吸って、口をすぼめて吐き出す(鼻で吸う1、2→吐き出す1、2、3、4)も紹介しました。さらに低栄養状態を防ぐための栄養補助食品としてプロテインパウダー等を紹介し、「少量で高エネルギーが摂れるものを上手に使ってください」と参加者の皆さんに呼びかけました。
次に、講演からフリートークに移る気分転換にと、リハビリテーション部の梅野裕昭理学療法士が参加者の皆さんと一緒に体操を行いました。その後、スタッフも各テーブルに交じり、参加者全員でフリートークを行いました。
参加者の方からは、「主人の闘病中に家族会があれば良いなと思っていました。同じ悩みや思いを共有して話すことによって解決策もあるし、悩みが少しでも晴れれば、闘病生活が明るい方向に向かうのではないかと心から思っています。この会が出来て本当に良かったなと思っています。」「今日は皆さんと良いことも悪いことも共有したいと思って参加しました。最近、気持ちが気弱になってきていたのですが、今日は元気をもらうことができました。ありがとうございました。」といった感想を頂きました。
最後に、当院がんサロン「太陽のカフェ フィーカ」でもおなじみの、ピアニストの足立栄さんによる演奏をバックに「春の小川」と「ふるさと」を全員で歌いました。
2時間余りの会でしたが、参加された患者さんやご家族、ご遺族の方にとって有意義な時間を過ごしていただけたかと思います。今後も参加者の皆さんからのご意見等を元に、全国に発信していける食道がん患者会を目指し、開催・運営していく所存です。

開催責任者の麓医師

講師の柴田智隆先生

講師の安部幸さん

会場の様子

梅野理学療法士による体操
(広報企画 羽田野)